THE AVANT-GARDE MUSEUM
THE AVANT-GARDE MUSEUM
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前衛芸術(AVANT-GARDE)が芸術としての地位を確立する過程において最初に作られた美術館についての研究をまとめた1冊。さらにこうした活動の社会・政治的側面や、今日の美術館にも役立つ可能性がある知的・実用的知見を分析する。
本書が刊行された2021年現在、世界的大流行が起きている新型コロナウイルス感染症の危機の中で美術館と来場者との間の新たなコミュニケーションが模索されているが、本書は、批評を含む芸術的な、また教育的かつ社会的目的を果たす近代美術館のアイデアが、前衛芸術家たちによって形作られてきたことを思い起こさせる。
「The Avant-garde Museum」プロジェクトは、前衛芸術作家と美術館の関係について我々が抱いている見方を見直すべきだという確信に基づいている。一般的には、前衛芸術と美術館は敵対関係にあり、両者の出会いは美術館の破壊、あるいはアヴァンギャルドの弱体化のいずれかで終わると言われている。この根強い考え方は、1970年代に出版され、今なお研究者や一般的な見方に多大な影響を及ぼしているペーター・ビュルガー(Peter Bürger)の「Theorie der Avantgarde(邦題:アヴァンギャルドの理論)」が基となっている。この物語に並ぶものとして、美術館を前衛芸術の目的を達成するためのツールだと信じ、自分たちの美術館を確立しようとしたアーティストたちを主人公としたもう一つの物語が存在する。こうしたアーティストたちが最も急進的なアヴァンギャルドの流派に関わっていたことは非常に興味深い。ビュルガーによると、芸術の制度(ひいては芸術団体)の解体を目指して最後まで戦い続けたのは彼らだという。カジミール・マレーヴィチ(Kazimir Malevich)、アレクサンドル・ロトチェンコ(Alexander Rodchenko)、エル・リシツキー(El Lissitzky)、ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキー(Władysław Strzemiński)、キャサリン・ドライヤー(Katherine Dreier)、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)などもこれに含まれる。彼らの美術館学的な成果を研究することは、芸術機関としての美術館の将来についての議論を促進するにちがいない。
このプロジェクトは、ソビエト革命後のロシアで興った「Museums of Artistic Culture」、1920年にニューヨークで発足した「Société Anonyme」、エル・リシスキーが1926年にハノーヴァーで設立した「Kabinett der Abstrakten」、1931年にポーランドの都市ウッチで前衛派のアーティストや詩人たちが集まって立ち上げた the a.r. group の「International Collection of Modern Art」など、前衛アーティストが主導して設立した美術館やそれに準ずる組織の比較対照を一つの目的としている。
「Museums of Artistic Culture」のコンセプトと活動に光を当てたマーシャ・クレノヴァ(Masha Chlenova / ニュースクール大学)とマリア・ゴフ(Maria Gough / ハーバード大学)らのエッセイ、the a.r. group 結成の歴史とその後の活動、「International Collection of Modern Art」の創設について書いたトーマス・ザウスキ(Tomasz Załuski / ウッチ・スチチェミンスキ美術アカデミー / ウッチ大学)とダニエル・ムジチュク(Daniel Muzyczuk / ウッチ美術館)のエッセイも収録。アメリカ最初の現代美術館設立という野望を掲げたアーティストたちのグループ、「Société Anonyme」に関する文書は、フラウケ・ヨーゼンハンス(Frauke Josenhans / Moody Center for The Arts)、ジェニファー・グロス(Jennifer Gross)、ジュリアン・マイヤーズ(Julian Myers / カリフォルニア芸術大学)、ジョアンナ・シュピンスカ(Joanna Szupińska / カリフォルニア写真美術館)による。さらに、アニエシュカ・ピンデラ(Agnieszka Pindera / Muzeum Sztuki)、サンドラ・レシュケ(Sandra Loschke / シドニー大学)、レベッカ・ウチル(Rebecca Uchill / マサチューセッツ大学)らのエッセイも収録。
本書は、2017年に始まったウッチの「Muzeum Sztuki」チームの研究を、世界各国の前衛芸術の歴史の専門家による国際的なカンファレンスを通じてまとめている。その集大成として、2021年末から2022年にかけてウッチ美術館本館で展覧会が行われる。
編集は、キュレーターのヤロスラフ・スーチャン(Jaroslaw Suchan)とアニエシュカ・ピンデラによる。
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softcover
624 page
横 / 縦
195 x 250 mm